桃太郎のその後。
鬼が島で鬼退治をした桃太郎は心が晴れなかった。
複雑な気持ちだけが残っていた。
――――赤鬼を倒し、青鬼との激戦中。 青鬼「なぜ、そんなに我々に牙を向けるのだ。鬼が鬼が島で暮らすことは悪いのか。」 桃太郎「鬼は人間に悪さをする!その悪いやつを退治をしに来ただけだ!」
青鬼「・・・。自分がどう生まれたか気にならないか?」 桃太郎「なんだ突然!黙らないと舌を斬るぞ!」
青鬼「本当に自分が爺さんと婆さんの子供だと思っているのか?」 桃太郎「ああ!」
桃太郎は「くだらない!」と青鬼を窮地へと追い込んだ。 そして青鬼は言った。 青鬼「私はお前の父親だ。」
頭が真っ白になった桃太郎は複雑さや憎しみで震えあがり、思いっきり青鬼を斬った。
――――その帰路であった。 悪を象徴する鬼が自分の親なはずがない! 親が悪ということは自分の血にも悪の血が・・・。 達成感ではなく罪悪感が残っていた。
仲間の犬、さる、キジが旅に同行したことにはある理由があった。 爺さん婆さんは桃太郎が両親に出会えるように動物たちにお願いしていたのだ。 「鬼が島まで迷わないよう、犬。お前が桃太郎を先導してください。」 「鬼が島までさみしくないよう、さる。お前のひょうきんさで桃太郎を笑わせなさい」 「食糧がなくなったとき、キジ。お前が桃太郎の食糧になりなさい。」 こう爺さん婆さんから裏で約束していたのだ。
桃太郎の旅は両親を引き合わせるための旅だったのだ。
なぜ鬼は自分の子を人間界に送ったのか?
鬼が島である捨てられた男の子を鬼たちは見つけた。 今まで感じた事のない「あたたかさ」「可愛らしさ」に出会った気がした。 赤鬼は自分を母親とし、青鬼は自分を父親とし、鬼たちは育てることにした。 しかし、自分たちは鬼。このままではこの子が上手く育てられる気がしない。
泣く泣く男の子を手放すことにした。手放してもっと自分たちより育てることに優れた人間に育ててもらおうと思った。
男の子がお腹が空いて死んでしまわないよう、大きな桃に男の子を入れ、川の上流へ流した。 鬼たちの頬からは涙が流れていた。
爺さん、婆さん、犬、さる、キジが協力してくれた「両親との引き合わせの旅」。
失敗に終わった哀しい旅がこの「新訳桃太郎」バッドエンド編です。